宮古島の城辺にある、マンゴーの専門農園「ぷすぷす農園」。育てているのは、アーウィン種のマンゴーです。農園を引き継いで3年。責任者の岡崎修平さんに、この農園のこと、そしてここでの働き方を聞きました。
「売るのを手伝ってほしい」から始まった

始まりは、マンゴーではありませんでした。別の相談で農園のオーナーと話をしていたとき、こう打ち明けられたそうです。
実はマンゴーの農家をしている。作ることは得意だけれど、売ることが苦手だ。売るのを手伝ってくれないか。
そうして最初の年は、販売を手伝うところから関わりました。
岡崎さんたちのスタンスは、「来たボールは打ってみる」。とはいえ、自分たちがマンゴーを作りたいと強く思っていたわけではなかった、と岡崎さんは振り返ります。
考えたのは、島の農業のことでした。この農園のハウスは、20年ほど前、マンゴーを島の産業として育てるために補助を受けて建てられたものです。マンゴーは単価が高い。若い農家がこれから農業で食べていこうとするとき、候補のひとつになります。
けれど、若い農家がいきなり自分でハウスを建てるのは、かなりハードルが高い。
この農園を引き継げば、マンゴーを作りたい若い人たちのプラットフォームになれるかもしれない。それなら、やる意味がある。そう考えて、引き継ぐことを決めました。
そのとき出会ったのが、当時ほかの農園でマンゴー栽培をしていた20代の女性でした。大きな農園にいたものの、今後の独立に向けてより挑戦できる環境を求めていたそうです。「うちの農園は裁量だけはあるので、独立に向けて挑戦することもできるよ」と伝えると、来てくれることになったそうです。その女性は、今年の9月に独立し、今では自分の畑を持っています。

手間と品質は、比例する
マンゴーづくりはかけた手間と品質が比例する、と考えているそうです。
手間をかければかけるほど、品質の高いものができる。ただ、そのぶん人件費もかかっていきます。
そして、天候があります。農家の技術や知識とはまったく別のところで、コントロールできない被害が出る。人をたくさん入れて高品質なものを作ろうとしたところに台風が来てだめになれば、大赤字です。
だから、人手と品質をどのくらいのバランスでかけるか。それを見極めながらやっている、と岡崎さんは言います
もうひとつ、この農園らしいところがあります。役割をはっきり分けていることです。
現場の人は、現場のことに集中する。売り方や商品づくりなど、現場以外のことは、岡崎さんがが考える。
暑い中で1日7時間も作業をしながら、どうやって売上を上げるか、どんな商品を作るかまで考えるのは難しい、と岡崎さんは話します。「脳みそを2つ使い分けている」という言い方をしていました。ハウスの現場は、現場責任者の角田さんが任されています。
うちは、2番目でも3番目でもいい
この農園の働き方で、いちばん特徴的なのがここです。アルバイトには、シフトがありません。
宮古島に来る人は、何かやりたいことを持って来ることが多い。マリンスポーツの仕事がしたい、美容の仕事がしたい。ただ、それだけでは食べていけないから、2つ目、3つ目の仕事をします。
そのときに飲食店を選ぶと、シフトの調整が必要になります。たとえば、この農園にはカメラマンのスタッフもいます。カメラマンの仕事は、前の日に急に入ることがある。レストランのシフトが入っていたら、休めません。
うちはシフトはいらない。本業が入ったら、そちらを優先していい。二足、三足のわらじのうちの一足にしてください。そう伝えているといいます。
働き始めた人は、その便利さに気づいて、結果的に長く関わってくれることが多いそうです。アルバイトスタッフは少ない時期で3人、多い時期で5人ほど。ミャンマーから来た人もいて、チームの組み方をいろいろ試しているところだといいます。
もちろん、農園の側から見れば、いつ誰がどれくらい来るかは読めません。そこは大変だと、岡崎さんも正直に話していました。
1人で、黙々と作業ができる人
農業に興味があってやってみたい、という人も、ときどき来ます。ただ、それだけだと、あまり長くは続かないそうです。
本当の厳しさは、やってみないとわからない。興味だけでは、動機として弱い。続けていくには、暮らし方や働き方そのものが合っていないといけない、というのが岡崎さんの考えです。
教え方は、最初は一緒に作業をするところから。慣れてきたら、一度1人でやってもらい、そのうえで伝えて、指導していきます。
向いているのは、1人でも黙々と、地道に作業ができる人です。人と話すのが好きで接客がしたい人は、接客の仕事に行けばいい。レストランでも「接客より皿洗いのほうがいい」という人のほうが、ここには向いているといいます。
ハウスはいくつもあり、ずっと見ていてあげることはできません。見ていてほしい、評価してほしい、という人には物足りないかもしれない。そこも、はっきり伝えていました。
台風が来ると、飛行機が飛ばない
いちばん忙しいのは、6月下旬から7月下旬。マンゴーの収穫の時期です。1年かけて育ててきたものを、この1か月ほどで収穫して届けます。
その時期に、いちばん怖いのが台風です。
実がたくさんついて、今年もうまくいきそうだね、と思えた年でも、台風は来ます。
台風で飛行機が飛ばなくなると、いくら注文があっても出荷できません。出荷できなければ、マンゴーは傷んでしまいます。島の中にはマンゴーがあふれて、バーゲンセールになってしまいます。
ぷすぷす農園は、バーゲンセールはしたくない。そこで去年から始めたのが「詰め放題」です。
10玉でいくら、と言ってもなかなか人は来ない。けれど、詰めるだけ詰めてこの金額、と言うと、ゲームのようにどきどきしながら詰めてくれる。1日に30組ほどが来て、たくさんのマンゴーを持ち帰ってもらったそうです。
1年かけて作っているものだから、1つも無駄にしたくない。岡崎さんは、それを自分の仕事だと考えています。前からやりたかったマンゴーの加工にも、これから取り掛かりたいといいます。
まずは、3〜4時間やってみる
興味がある人には、まず3〜4時間やってもらうといい。実際にやってみれば、合うかどうかがわかります。
社員として入りたい、という人もときどきいます。その場合も、まずはやってみる。1か月やって話をして、3か月やって、続けたいと思えたら、そこから条件を相談する。
契約の形は、雇用契約、アルバイト、業務委託の3つ。実際に働いてもらってから、その人が働きたい時間の量やスタイルに合わせて、いちばん合う形を決めます。
今多いのは、実は業務委託です。3か月でこれくらいのことにコミットします、と宣言して契約し、3か月が終わったら、また次の3か月を契約する。秋になったら島を離れます、という人も多いので、先にわかっていれば準備ができるのだそうです。
ただ、シフトなしで人が出入りする今の形が、いちばんいいと思っているわけではありません。シルバー人材の方なら、週に2回、決まった時間に必ず来てくれる。誰がいつ来るかがわかれば、作業の割り振りも計画できます。
最終的には、社員3人ほどで安定して回せるのがいちばん。年々、安定感のあるチームを目指していく、というのは変わらないそうです。ただ、初めから長く関わる人を求めているわけではありません。来てもらって、やってみて、スタイルが合えば、結果的に長く残ってくれればいい。そういう考え方です。
会社より、現場が強い

引き継いで、3年目が終わりました。ようやく経営としての土台ができた、と岡崎さんは言います。
始めたころは、ハウスも木も荒れていて、整えるところからでした。人もいない。ホームページもインスタグラムも、パッケージもない。お金もない。
1年目は1玉用のマンゴーのパッケージを作り、公式サイトを作った。2年目には複数玉を入れるパッケージも揃いました。1年ずつ、少しずつ準備を重ねてきました。3年やって、売上も見えてきた。ようやく勝負できる材料がそろった、という感覚だそうです。
4年目からは、新しい挑戦をいろいろしていきたいと話していました。
そのうえで、ずっと大事にしているのが現場です。現場の人がいなければ、何もできない。だから、会社より現場のほうが強い。
現場が頑張ったら、頑張ったぶんだけのフィードバックが返ってくる。報酬もそうだし、働き方の自由もそう。現場の人が生き生きと働ける場所を、これからも整えていきたいと岡崎さんは言います。
3年間の助走期間を終えて、ここからは、もっと多くの人にマンゴーを届けていく段階です。
会社データ
- 名称:ぷすぷす農園
- お話を聞いた人:責任者 岡崎修平さん
- 事業内容:マンゴー(アーウィン種)の栽培・販売
- 所在地:沖縄県宮古島市城辺長間2290
- Webサイト:https://pusupusu.jp/
- Instagram:@pusupusumango
- 取材日:2026年10月2日
島しごと図鑑



